自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言書保管制度とは

 自筆証書遺言書保管制度では、遺言者は自分で自書した遺言書を管轄の法務局に持参し、保管を申請することができます。

 自筆証書遺言は、相続開始後に見つからなかったり、紛失、隠匿や破棄されるなどのおそれもあることから、この制度が創設されました。

 自筆証書遺言の保管制度では、遺言者本人による申請が必要で、法務局に遺言書の原本が保管され、その画像データが保管されます(法務局における遺言書の保管等に関する法律第1条、6条、7条)。

申請の方法

 申請書には、遺言作成年月日、遺言者の氏名や生年月日、本籍と筆頭者、連絡先電話番号、受遺者や遺言執行者を記載して遺言書保管官に提出します。

 この制度の申請をすることができる者は、日本国内に住所若しくは本籍を有し、又は不動産を所有している者で国籍は問われません。 

 保管申請時には、運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの本人確認書類を持参のうえ、遺言者本人しか申請できず、他人が代理で保管申請をすることはできませんのでご注意ください。

 遺言書保管官は、遺言者が持参した遺言の適合性を確認して受付をするため、遺言書は封をせずに持参する必要があります。

 遺言書保管官は、保管をする遺言の形式が適合しているかどうかを確認しますが、遺言書の内容が有効かどうかまでは確認しませんので、内容について相談したい場合は専門家に問い合わせが必要です。

 そして、申請時は法務局に対しての手数料が3900円必要となりますが、保管年数に応じた保管料は発生しません。

 費用はそれほどかかりませんが、作成様式が法務省令によって決められています。

 例えば、次の通りです。

(1) 用紙は文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙とすること。

(2) 縦置き又は横置きかを問わず、縦書き又は横書きかを問わない。

(3) 複数枚に渡る場合は、ページ数を各ページに記載すること。

(4) 表面のみに記載して裏面には何も記載しないでください。

(5) 数枚にわたるときであっても、綴じ合わせないこと。また複数枚になったときは、全てのページに署名捺印をすることをお勧めします。最後のページは必ず署名捺印をします。

(6) 余白が決められており、縦置きにした場合上5ミリメートル以上、下10ミリメートル以上、左辺は2穴開けて保管されますので、20ミリメートル以上の余白、右5ミリメートル以上余白をあけますが、余白部分には何も記載しないようにします。

(7) 財産目録自体は自書する必要はありませんが、記載ある全てのページに署名、押印が必要です。

 遺言の保管申請をしますと、手続き終了後に保管証を受け取ります。

 この保管証には、遺言者の氏名、生年月日、保管番号が記載されます。保管証がありますと手続きがスムーズに進みますが、紛失しても再発行はされませんのでご注意下さい。なお、保管証が無い場合でも手続きは可能です。

 そして、遺言書保管ファイルには、遺言書の画像情報、遺言書の作成年月日、遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍、遺言執行者の氏名、住所、保管を開始した年月日や保管番号などが記録されます。

保管申請後にできること

 もし、遺言書の閲覧や撤回をする場合、遺言者が自ら法務局に出頭して行う必要があります。

 遺言者は、遺言書の保管されている法務局にていつでも保管されている遺言をモニター若しくは原本の閲覧をすることができます。この場合、手数料が必要となります。

 また、保管申請時以降に氏名、住所等に変更が生じたときは遺言書保管官にその旨を届け出る必要があります。

 そして、遺言者は、遺言の保管されている法務局にて、いつでも手数料を納めて遺言の保管の申請を撤回することができます。この場合、遺言が法務局から返還され、法務局のデータベースから遺言に係る情報が削除されます。

相続開始後

 相続開始後は、相続人等が遺言書原本の写し(遺言書情報証明書)の交付や閲覧を請求することができます。

 なお、この制度によって保管されている遺言書については検認を要しません。

 この遺言書情報証明書を使って相続登記や銀行預金の手続きを行います。遺言書情報証明書が交付申請されますと、遺言書保管官は相続人全員及び受遺者、遺言執行者に通知をします。この通知をするには相続人全員の戸籍一式が必要となるため、検認は不要となっても戸籍集めをして、さらに相続人全員に通知が行われます。

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